2022-11-09

パブコメのたね:11月15日23時まで「原子力廃炉円滑化WG中間報告」

総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 廃炉等円滑化ワーキンググループ 中間報告(案)に対する意見募集について
受付締切日:2022年11月15日23時0分
詳細:提出先フォーム

チームパブコメの資料:WordのPDF PowerPointのPDF

この意見募集の背景
  1. 原子力事業者が原発廃炉のための資金を、単独では十分に確保できていない(今後もできない)という現実。
  2. 原発の資産価値が大きく、通常の減損会計で処理すると、資産が縮小し原子力事業者の多くが債務超過に陥ること。
  3. そこで、運転終了後(廃止措置期間)も一部機器は減価償却できることにし、廃炉の解体引当金と合わせ、これらを電気料金に参入することを認めた。(電力自由化前)
  4. さらに「廃炉しやすくする」名目で、運転終了後も原発資産のほとんどを資産計上し、一定期間をかけて償却できることにとした。(電力自由化前)
  5. 「電力自由化後」の財務会計ワーキングで、福島原発事故の損害賠償費用(過去分)と合わせ、廃炉費用を託送料金から徴収することを決めた。これを「廃炉円滑化負担金」と呼ぶ。
  6. 原子力事業者の経営状態は厳しくなっており、仮に原子力事業者が倒産しても、原発の廃炉、事故炉の処理が円滑に行われるように、託送料金から徴収する廃炉円滑化負担金を「廃炉拠出金」として「外部組織」に積み立てることとする(今回の提案)

パブコメのたね_トピックス
① 廃炉円滑化負担金
② 廃炉会計という「特殊な会計」の問題
③ 廃炉会計制度は無責任な制度
④ 原子力事業者が全て倒産しても電気は止まらない
⑤ 原子力事業者を守ろうとするのは誤り
⑥ 廃炉の知見・ノウハウと資金について
⑦ 廃炉機構を作るのであれば、原発再稼働や革新炉新設などの方針を中止すべきである
⑧ 認可法人の姿はこれで良いのか?
⑨ 中間報告への意見(まとめ)

① 廃炉円滑化負担金
経産省は、「原発依存度の低減」のため、「円滑な廃炉を促す」ため、「原子力発電所の廃炉に伴って一括して生じる費用」を「分割計上する費用」として、「電気料金(託送料金)の一部として需要家から受け取ります。」

経産省ホームページより


原子力発電所の廃炉費用は、原子力発電事業者が負担すべきものです。それが法律でもなく(つまり国会での議論もなく)閣議決定で、需要過負担(つまり国民負担とされました。これは正当な手続きでしょうか?


② 廃炉会計という「特殊な会計」の問題

原発が廃炉になったときの現行の会計制度は、2013年、2015年、2017年の3回にわたって議論され、新設された。(金森絵里著「原子力発電の会計学」第7章より。

1)2013年廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ
  >運転終了後も減価償却を認め、減価償却費と解体引当金を料金原価に含める。

2)2015年年廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ
  >廃炉費用を一括計上せず、原発資産を資産計上して、一定期間をかけて償却・費用化する。

3)2017年財務会計ワーキンググループ
  >廃炉会計制度において小売料金から回収していた解体引当金等を託送料金から回収する。

本来は「減損会計」に基づき、廃炉後に係る費用は原子力事業者負担が当然であった。

ところが原子力事業者は解体引当金も満足に積みたてておらず、原子力発電所を減損処理することによる経営上の損失が大きく、「恐ろしくて?」廃炉ができないといけないので、会計規則をねじ曲げて、廃炉が進み、原発依存度が低減するようにしよう・・とした。

その割に廃炉は進んでおらず、存続し続けている。解体引当金は、その間も需要家の電気料金(託送料金)から「回収?」され続ける。



③ 廃炉会計制度は無責任な制度

1. 製造物責任や有害物質の排出者責任などの観点に基づくならば、原子力発電所及び核燃料サイクル関係施設の費用負担は原子力事業者が一元的に負うべきである。

2. ところが「廃炉会計制度」は、なし崩し的に原子力事業者の負担を軽くし、これを国民(消費者)負担に置き換えている。

3. 原発の廃炉によって原子力事業者が債務超過に陥ることも、廃炉費用が積み立てられていないことも、原子力事業者の経営の失敗であって、まずそのことの責任が明確にされなければならない。

4. その上で、原発が野ざらしになるとか、放射能が拡散するとか、核廃棄物が違法に廃棄されるという事態を防ぐために「税金で」この対応をしなければならないというのであれば、そのように報告がまとめられるべきである。

5. 残念ながら、この中間報告は、経営を失敗した原子力事業者を救済し、そのつけを国民(消費者)に押し付けるものでしかない。その前提での議論は中止されなければならない。

6. そのような大前提に立って、この中間報告の詳細を見る。



④ 原子力事業者が全て倒産しても電気は止まらない

まず基本的な認識が必要。

1. 原子力事業者を「発電会社」とするならば、全社が倒産しても電気の供給が止まることはない。倒産前に保有する発電所を、他社に売却し、不十分であれ、原子力施設の廃炉解体費用に充てる。発電所は運転を続け、引き受けた新電力もしくは電力卸売市場を通じて消費者に供給される。

2. 原子力事業者を「送配電会社」とするならば、最も多くの資産を持つ会社である。その資産を全て他者に売却し、原子力施設の廃炉解体費用に充てる。送配電の施設も要員も買い取った会社が、そのまま運用すれば、電気の供給が滞ることはない。

3. 原子力事業者を「小売会社」とするならば、ほぼ資産もなく何の価値も有さない。直ちに倒産し消滅することにより、電力自由化の自由度を広げ、より健全で効率的な電気供給システムが出来上がる。

4. 原子力事業者を「ホールディングカンパニー」(持株会社)とするならば、電力自由化の流れを歪めているだけであり、直ちに消滅しても電気の供給には差し障りがない。



⑤原子力事業者を守ろうとするのは誤り

したがって、原子力事業者(4部門)を守ろうとするのは間違っている。

どんなに守っても、それは電力システムの効率性、健全性を損なうだけで、最終的に原子力事業者が生き残ることはできない。見切りをつけることが必要。

原子力関連の負担は増え続け、小売のシェアは奪われて減る。送配電設備は非効率に巨大化し、維持することが求められる。

彼らには、原子力関連施設を廃炉・解体処理したり、廃棄物を安全に管理したりすることはできない。せめてもの有価資産を売却して、その一部資金を提供することぐらいである。

その前提に立って、「廃炉機構」(仮称)を作ろうということであれば理解できる。

「廃炉機構」には、原子力事業者の資産売却益、これまでの解体引当金が引き継がれるが、原子力施設の解体廃炉費用のほとんどは税金で賄われることになる。

時期を引き延ばせば、原子力事業者が拠出しているように見えるが、それは託送料金であり、消費者が全て負担している。これは電気料金を上げ、日本の経済活動に困難をもたらすだけであり、早く止めることが望ましい。



⑥ 廃炉の知見・ノウハウと資金について
  • 中間報告の2ページから3ページには、廃止措置がビジネスになるであろうことが書かれている。
  • 英国ではNDA(原子力廃止措置機関)やフランスのEDF(国有電力会社)が、このノウハウ蓄積に取り組んでいることが書かれている。
  • 中間報告が書いている通り、二つとも国営である。
  • かつてイギリスにはBNFL、フランスにはCOGEMAという民間会社があったが、2社とも倒産した。NDAやEDFは、これらの資産を継承している。
したがって廃炉ビジネスを否定するものではないが、国家的レベルで行わなければ維持できない。逆説的にいうならば、ビジネスとは言いながら、採算性を度外視した管理や開発を要求されるものとなるだろう。

英仏さらに米国では、原子力は核兵器開発とほとんど一体である。廃炉ビジネスは、核兵器開発能力の維持管理にもつながるため、そこに国家的予算が注ぎ込まれても理屈が通るが、非核保有国を明言している日本では必要ない。

したがって、この分野での知見・ノウハウに日本がこだわる必要は見当たらない。
そのための資金も必要ない。


⑦ 廃炉機構を作るのであれば、原発再稼働や革新炉新設などの方針を中止すべきである

5ページの⒉(1)の①では、こう書かれている。
「我が国に導入された商業用原子炉には、黒鉛減速炭酸ガス冷却炉、加圧水型軽水炉、沸騰水型軽水炉及び改良型沸騰水型軽水炉等の種類があり、また同じ炉型であってもその機能や様態には相違点があること」・・等を踏まえ、各原子力事業者が廃止措置を担うしかない・・的なことが書かれている。

ところが政府は、さらに新型炉、革新炉などを導入しようとしている。いたずらに新型を増やして、廃炉の枠組みをこれ以上複雑にすべきではない。

このことは②の「事業者間・産業大での連携」とも矛盾している。多種多様にすればするほど、効率的な廃炉技術の蓄積は困難になる。



⑧ 認可法人の姿はこれで良いのか?


⑨ 中間報告への意見(まとめ)

1. 原子力への特別扱いとなっている廃炉会計は、本来の会計原則を逸脱しており、直ちに廃止して、本来の「減損会計」に戻すべきである。

2. 解体引当金の不足額は、会社利益から補填もしくは、会社資産を売却して埋め合わせをさせるべきである。

3. 原子力発電所の廃炉は、それを作り運用し利益をあげた原子力事業者が最後まで面倒をみるという原則を、改めて確認すべきである。

4. その上で原子力事業者が債務超過、倒産という事態になった場合に、政府が廃炉等の処理を担うという仕組みとすべきである。

5. 政府は原子力事業者は倒産、廃業となって消滅した場合に限り、その事業者の原発の廃炉を廃炉機構(仮称)に委託する。原子力事業者が存在している限り、廃炉は原子力事業者が行う。

6. 廃炉機構が行う廃炉作業について、その費用は全て国費(税金)で賄うものとし、託送料金による徴収は行ってはならない。


以上。

2022-11-02

パブコメのたね:11月4日17時0分まで「一般送配電事業者10社の収入の見通し」

一般送配電事業者10社の収入の見通しに関する書類に係る「国民の声」の募集について

パブコメ受付締切日時    2022年11月4日17時0分

このパブコメの背景にあるもの

  • 2023年度から一般送配電事業者には「レベニューキャップ 制度」の導入が決まっている。
  • 収入上限を設定し、経営努力で費用が圧縮されれば、差額を利益にできる。
  • 5年後には収入上限が見直され、さらなる費用圧縮を求める。
  • 送配電事業者にとっては経費を削らねばならない嫌な制度。

パブコメのたね

  1. 会計上、制御不能費用という項目立ては、内訳を不透明にすると同時に、電気料金を上昇させるブラックボックスとなる可能性が大きい。
  2. 他項目の中にも、「制御不能費用に分類されるものを除く」という表現が多く見られ、本来の項目の数字が正しく認識されなくなる恐れがある。
  3. 制御不能費用の中に原子力発電の費用が盛り込むべきではない。過去の原子力会計制度における議論の結果とは思うが、本来は原子力事業者が自社で負担すべきものである。
  4. それを託送料金から徴収するという整理が許されるのは、唯一、原子力事業者が完全に原子力事業から撤退することが決定した段階のみである。
  5. それであっても、原子力発電のメリットを享受していない、これから生まれる子供たちなど、多くの国民にその負担を強いることの是非は議論されなければならない。
  6. 制御不能費用を認めたまま、レベニューキャップ 制度をスタートさせることは、事業者負担の大原則を曲げる仕組みの固定化であり、これは立ち止まり再検討すべきである。
  7. したがって各社の「制御不能費用」が盛り込まれた「収入見通し」は認められない。

制御不能費用の内訳

収入の見通しの算定に関する検証作業項目(案)について
第16 回 料金制度専門会合(電力・ガス取引監視等委員会)
事務局提出資料 2022年 8 月 8 日資料4より 

1)容量拠出金

2)ブラックスタート電源確保費用
3)調相運転用の電源確保費用
4)最終保障供給費用
5)インバランス 収支過不足額
6)減価償却費(既存投資分)
7)電源開発促進税
8)法人税等
9)賃借料(法令や国のガイドラインに準じて単価設定される費用)
10)賠償負担金相当金・廃炉円滑化負担金

の10項目とされているが、実際には退職給与金やPCB処理費用なども含まれている。



コメントいただけると嬉しいです。
レッツ☆チームパブコメー

2022-07-20

判決先の図を作ってみた。東電旧経営陣4人に計13兆円余の賠償命令(原子力事故)

2022年7月13日に東京地方裁判所で、福島第一原発事故当時の東京電力株式会社の取締役が賠償すべきという判決について、2016年12月に公表された「福島事故及びこれに関連する確保すべき資金の全体像と東電と国の役割分担 」を参照して作ってみました。




賠償金額として判決で認定された13兆3210億円の内訳
/廃炉・汚染水対策:1兆6150億円
/被災者に対する損害賠償費用:7兆834億円
/除染・中間貯蔵対策費用:4兆6226億円

原告株主が請求した22兆円(画像★)よりは少ないですが、これまでに支出された金額を積み上げて、損害額として認定されています。また、重要なのは判決要旨に記載されている以下の認定事実です。

4人の元取締役【勝俣恒久元会長、清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長】に13兆円を超える、損害賠償金の支払いが命じられました。

2022-07-12

漢数字を英数字にしてみた。質問と回答「原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書」

2016年12月20日の閣議決定から5年半が経ってしまいました。。

チームパブコメは原子力損害の賠償負担金に関する質問や関連省庁へのレクチャーを重ねてて、今回の政府回答について、チームパブコメのメンバー曰く、矛盾点が明らかになる兆しとのこと◎

横文字は英数字が読み易いので置換&質問の下に回答を挿入してみました◎
この内容が全国へひろがると嬉しいな。

☆質問と回答_原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書20220712.docx

☆質問と回答_原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書20220712.pdf


下記URLに正式な質問と回答がHTMLとPDFで掲載されてます。

令和4年6月10日提出 質問第136号
原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書
提出者 山崎 誠
 
令和4年6月24日受領 答弁第136号 
内閣衆質208第136号 令和4年6月24日
内閣総理大臣 岸田文雄 
衆議院議長 細田博之 殿
衆議院議員山崎誠君提出原子力損害の賠償負担金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書

 賠償負担金は、原子力損害の賠償に関する法律(以下、「原賠法」という)および原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「支援機構」という)法に基づく電気事業法施行規則第45条の21の3(以下、「改正規則」という。)によって規定されている。
 平成28年12月20日閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(以下、「基本指針」という。)の26頁「(前略)国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。」に基づき、改正規則では「(前略)原子力損害(原賠法第2条第2項の原子力損害)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力事業者が平成23年3月31日以前に原価として算定することができなかったものを、一般送配電事業者が行う接続供給によって回収しようとするとき」の資金を「賠償負担金」としている。福島第一原子力発電所事故前に「原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金」の意味するところを含め、これらの法令等の適用、解釈、運用等を確認するため、以下質問する。

一 原子力事業者は、福島原発事故前(以下、「事故前」という。)には原賠法第6条に基づき原子力損害の損害賠償措置(備え)として、原子力損害賠償責任保険契約(以下、「責任保険」という)及び原子力損害賠償補償契約(以下、「補償契約」という)を結んでおり、それぞれ保険金及び補償金1200億円(同第7条)を原子力損害の賠償に備えた資金としていたのではないか。また、事故前に原賠法上、賠償措置額以外に原子力損害の賠償に備えた資金は他にあったのかどうか、見解を示されたい。

一について
 お尋ねの「原子力損害の賠償に備えた資金としていた」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子力事業者は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)第6条及び第7条第1項に基づき、一工場若しくは一事業所当たり又は一原子力船当たり1200億円(政令で定める原子炉の運転等については、1200億円以内で政令で定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとする原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結又は供託等の措置を講ずることとされている。
 また、お尋ねの「事故前に原賠法上、賠償措置額以外に原子力損害の賠償に備えた資金」の意味するところが必ずしも明らかではないが、賠償措置額以外に、原子力事業者が、原子力損害の賠償に充てることができるものについて、原賠法上、特段の定めはない。

二 「改正規則」にある「原子力損害の賠償に備えておくべきであった資金」とは、原賠法でいう「損害賠償措置」であり、資金とは「賠償措置額」のことを意味するのではないか。違うとすれば、何を意味しているのか、明確に示されたい。

二について
 お尋ねの「「改正規則」にある「原子力損害の賠償に備えておくべきであった資金」」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号。以下「施行規則」という。)第45条の21の9第1項に規定する「賠償のために備えておくべきであった資金」についてのお尋ねであれば、原賠法に規定する賠償措置額とは異なり、万一の際の賠償の備えとして、一般負担金として東京電力福島第一原子力発電所事故前から納付しておくべきであった原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号。以下「機構法」という。)第38条に規定する負担金の一部を指すものである。

三 支援機構は、原賠法第16条に基づく事故後の「資金援助」のための組織である。
 1 「資金援助」は、原賠法第7条の「賠償措置額1200億円」では足りなかった損害賠償費用の資金を援助しているのでないか。それが支援機構法第41条の「要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金」であり、損害賠償交付金額は「賠償措置額」の不足金額ではないのか。違うとすれば、その理由を明確に示されたい。

三の1について
 お尋ねの「援助しているのではないか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、機構法第41条に規定する資金援助については、原子力事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額を超えると見込まれる場合に、当該原子力事業者による原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に資するため、当該原子力事業者が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」という。)に申し込むことができる資金的な援助である。

 2 改正規則の「事故前に備えておくべきであった資金」とは、賠償措置額1200億円(補償金は1889円)の備えでは足りなかった損害賠償交付金を意味するのではないか。違うとすれば、何に備えておくべき資金なのか、明確に示されたい。
 3 改正規則のいう原賠法上の「事故前に備えておくべきであった資金」とは、事故前に「備えておかなかった資金」あるいは「備えておけなかった資金」となる。何故、事故前に備えておかなかったのか。あるいは備えておけなかったのか。その理由を明確に示されたい。

三の2及び3について
 お尋ねの「改正規則の「事故前に備えておくべきであった資金」」、「改正規則のいう原賠法上の「事故前に備えておくべきであった資金」」及び「事故前に「備えておかなかった資金」あるいは「備えておけなかった資金」」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、施行規則第45条の21の9第1項に規定する「賠償のために備えておくべきであった資金」についてのお尋ねであれば、「賠償措置額1200億円(補償金は1889円)の備えでは足りなかった損害賠償交付金を意味する」のではなく、万一の際の賠償の備えとして、一般負担金として東京電力福島第一原子力発電所事故前から納付しておくべきであった機構法第38条に規定する負担金の一部を指すものである。

 4 この資金を事故前に「備えておかなかった責任」は、誰が負うべきものと考えるか。例えば、政府、原子力事業者かが負うべきものではないか。見解を問う。少なくとも、需要家には、この資金を事故前に「備えておかなかった責任」はないと考えるが、見解を問う。責任があるという見解であれば、その理由を明確に示されたい。

三の4について
 お尋ねの「責任」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

四 令和3年12月24日、当方が経済産業省(以下、「経産省」という。)より説明を受けた際、当方からの質問への回答では、改正規則にある事故前に「原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金(以下、「過去分」という。)」とは、全需要家の負担すべき過去分であり、資金額は3.8兆円であり、保険料及び補償料ではない、と示された。
 1 右の回答に誤りはないか。誤りがあるとすれば、明確に示されたい。

四の1について
 御指摘のとおり、「右の回答に誤りはない」と考えている。

 2 「過去分」3.8兆円の資金は、原賠法上の保険金あるいは補償金なのか。原賠法とは関係ない資金であれば、いかなる法令に基づく資金なのか、明確に示されたい。

四の2について
 お尋ねの「「過去分」3.8兆円の資金」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、施行規則に規定する「賠償のために備えておくべきであった資金」についてのお尋ねであれば、施行規則第45条の21の9第1項に規定する賠償負担金である。

 3 「過去分」3.8兆円を全需要家が負担するということは、原子力事業者は「過去分3.8兆円」を回収することになる。では原子力事業者の負担する「過去分」の資金の金額はいくらか。「過去分」の資金の全額と合わせて、明確に示されたい。
 4 「過去分」は需要家だけが負担するものなのか。原子力事業者の負担する「過去分」は存在するのか。その理由を含めて、明確に示されたい。

四の3及び4について
 お尋ねの「「過去分」の資金の全額」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、万一の際の賠償への備えとして確保されておくべきであったが、このための制度は機構法の施行以前に存在しなかったため、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(平成28年12月20日閣議決定。以下「福島復興指針」という。)において必要な措置を講ずることとしたものであり、当該措置に充てられる金額は約3.8兆円である。また、お尋ねの「原子力事業者の負担する「過去分」の資金の金額」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、施行規則に規定する「賠償のために備えておくべきであった資金」のうち、原子力事業者が平成23年度から令和元年度までに納付した一般負担金についてのお尋ねであれば、その金額は約1.3兆円である。

 5 事故前に原子力事業者は、原賠法上及び原子力損害賠償保険契約上の負担義務を負い、「責任保険」の保険料、「補償契約」の補償料を負担していたと考えるが相違ないか。また、それら以外に負担していたものがあれば、示されたい。また、事故前に原子力事業者に原賠法上の保険料及び補償料以外に負担義務がないとすれば、事故後に原子力事業者が、過去分3.8兆円の資金を負担しなければならない理由を明確に示されたい。

四の5について
 お尋ねの「事故前に原子力事業者は、原賠法上及び原子力損害賠償保険契約上の負担義務」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、原子力事業者は、原賠法第6条に基づく損害賠償措置として、原賠法第7条に基づき原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結を行う場合については、原賠法第八条に基づき原子力損害賠償責任保険契約の保険料を支払うこと及び原賠法第10条に基づき原子力損害賠償補償契約の補償料を納付することとされている。
 また、お尋ねの「事故後に原子力事業者が、過去分3.8兆円の資金を負担しなければならない理由」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、施行規則第45条の21の9第1項に規定する賠償負担金については、万一の際の賠償への備えとして確保されておくべきであったが、このための制度は機構法の施行以前に存在しなかったため、福島復興指針において必要な措置を講ずることとしたものである。

五 「基本指針」24頁には、「交付国債の償還費用の元本分は、原子力事業者の負担金を主な原資として、支援機構の利益の国庫納付により回収される。」とある。
 1 事故後、原子力事業者は、保険料でも補償料でもない「過去分3.8兆円の資金」を支援機構への「一般負担金」として納付し負担している。この納付した過去分は、東電への交付金の返済金として、支援機構から全額国庫納付されている。何故、事故前の「過去分」が、事故後の支援機構の交付国債の返済金となっているのか、その理由を明確に示されたい。併せて、法令上の根拠を示されたい。
 2 事故前の「過去分3.8兆円」を回収する目的は、支援機構が事故後の東電への交付金分(交付国債)の借入を返済するためか。見解を問うとともに、その目的を明確に示されたい。
 3 支援機構法第38条は、原子力事業者は「機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならない。」と規定している。この「一般負担金」で支援機構は、借入金の交付国債の返済を行っている。借入金の返済金は、「業務に要する費用」に当たるのか、その理由を含めて明確に示されたい。

五の1から3までについて
 お尋ねの「支援機構の交付国債の返済金」、「事故後の東電への交付金分(交付国債)の借入を返済する」及び「借入金の交付国債の返済」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、機構法第38条の規定において、原子力事業者は、機構法第35条に規定する機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならないとされている。

 4 支援機構の借入金を「一般負担金」で返済するとすれば、交付国債の借入枠13.5兆円及び東電への投資資金1兆円などの借入金の返済も「一般負担金」で行うことを意味するのか。違うとすれば、その意味を含めて明確に示されたい。

五の4について
 お尋ねの「支援機構の借入金を「一般負担金」で返済する」及び「交付国債の借入枠13.5兆円」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、お尋ねの「東電への投資資金1兆円」の「借入金の返済」については、機構が保有する東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)の株式の売却やそれにより生じる利益によって行う考えである。

六 「基本指針」23頁注12には「(前略)交付国債の発行により対応すべき費用としては、(中略)平成29年度予算において、支援機構に交付する交付国債の発行限度額(現行9兆円)を13.5兆円に引き上げる。」とある。
 1 「過去分」3.8兆円とは別に、東京電力ホールディングス株式会社(以下、「東電」という)以外の原子力事業者は、東電の事故後の「確保すべき資金」として損害賠償費用資金8兆円のうち3.7兆円を支援機構への「一般負担金」で分担して負担している。東電以外の原子力事業者が東電の損害賠償費用3.7兆円の資金を分担負担しなければならない理由と法的根拠を明確に示されたい。これは原賠法第4条に定める責任の集中に反すると考えるが見解を問う。また、反しないとすれば、その理由を明確に示されたい。

六の1について
 機構法第38条の規定において、原子力事業者は、機構法第35条に規定する機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならないとされている。また、全ての原子力事業者が機構に対して負担金を納付する義務を定める機構法第38条第1項の規定は、損害賠償に備えた原子力事業者の相互扶助の考えに基づいたものであるが、福島第一原子力発電所の事故による損害を賠償する直接的な責任を東京電力以外の原子力事業者に負わせるものではないことから、「原賠法第4条に定める責任の集中に反する」との御指摘は当たらないものと考える。

 2 東電以外の原子力事業者の負担する損害賠償費用3.7兆円の「確保すべき資金」は、令和2年度からの「一般負担金」のうち、一年間でいくら支払うのか、その金額と、何年にわたって支払うのか、その期間を示されたい。

六の2について
 お尋ねの「一年間でいくら払うのか、その金額」及び「何年にわたって支払うのか、その期間」については、現時点において決定していない。

 3 「過去分3.8兆円」と東電以外の原子力事業者の負担する「損害賠償費用3.7兆円」は、意味するところは同じなのか、見解を問う。併せて、それぞれ原賠法及び支援機構法上で、どのように位置づけられているのか、明確に示されたい。

六の3について
 御指摘の「過去分3.8兆円」及び「損害賠償費用3.7兆円」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮にそれぞれ「賠償負担金」と「一般負担金」についてのお尋ねであれば、「賠償負担金」は施行規則第45条の21の9第1項において、「一般負担金」は機構法38条において、それぞれ規定されているものである。

 4 原賠法上の「事故前に備えておくべきであった資金(過去分)」は、事故後には原賠法上の「備えておくべき資金(将来分)」となるのではないか。原子力事業者は、「事故前の過去分」とは別に「将来の事故の備えとして」の3・8兆円を支援機構に納付しなければならないと考えるが、見解を問う。また、納付を必要としないとすれば、その理由を明確に示されたい。

六の4について
 御指摘の「「事故前の過去分」とは別に「将来の事故の備えとして」の3.8兆円を支援機構に納付しなければならない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、機構法第38条の規定において、原子力事業者は、機構法第35条に規定する機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならないとされている。

 5 将来の原子力損害事故に備えるとすれば、原賠法における賠償措置額を1200億円から、少なくとも東電の損害賠償費用として交付している金額の8兆円に見直す必要があると考えるが見解を問う。併せて見直す必要がないとすれば、その理由を明確に示されたい。

六の5について
 お尋ねについては、賠償措置額について、国際水準に照らして十分高い水準であること、原子力損害賠償責任保険に係る国内外の保険市場の動向に照らして引上げが困難な状況にあること等を勘案した結果、原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第90号)による原賠法改正時においては当該賠償措置額についての見直しを行わないと判断したものであるが、文部科学省を中心に、引き続き検討を行うこととしている。

パブコメのたね:4月13日23時まで「東電EP規制料金値上げ申請」&原子力PPA契約の不思議

不思議な仕組みであることが解ってきた。ような気がするー https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620223006&Mode=0 東京電力エナジーパート...